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それでも、 日本人は 「戦争」を選んだ

それでも、 日本人は 「戦争」を選んだ
〘接続〙 後の事柄が、前の事柄や予想に反したものであることを示す。
そうであっても。 それにもかかわらず。 だが。

加藤陽子

東京大学文学部教授

朝日出版社

普通のよき日本人が、世界最高の頭脳たちが、 「もう戦争しかない」と思ったのはなぜか? 高校生に語る――日本近現代史の最前線。

本著作物を電子化するにあたり、書籍版(縦組み)を底本にいたしました。一部の漢字・ 記号など、底本と異なる表示・表記をした箇所があります。また、ご覧になる機種や設定 により、画面表示が異なる場合があります。

はじめに


これまで中高生というよりは
中高年に向けた教養書や専門書を書くことの多かった私が、
日清戦争から太平洋戦争まで の日本人の選択を、なぜ、高校生と考えようと思ったのか。
まずはこの点から説明しておきましょう。
大学の先生の話はまわりくどくて長いですが、少しだけ我慢して読んでください。
@まわり‐くど・い〔まはり‐〕【回りくどい】
読み方:まわりくどい
[形][文]まはりくど・し[ク]遠回しでわずらわしい。「—・い解説」

東大で日本近現代史を教えはじめて、早いもので十五年がたちました。
所属は文学部ですから、教える対象は東大に入学 してから三年目以上の学部生と大学院生です。
いずれも優秀な学生には違いありませんが、
教えながら日々感じる疑念は、
まずは教養学部時代に文系と理系に分けられ、
さらに法学部・経済学部へと進学者が分かれた後の文学部の学生だけに日本近現代史を教えるのでは遅いのではないかというものでした。
鉄は熱いうちに打て、ですね。


私の専門は、
現在の金融危機と比較されることも多い一九二九年の大恐慌、
そこから始まった世界的な経済危機と戦争の 時代、
なかでも1930年代の外交と軍事です。
新聞やテレビなどは30年代の歴史と現在の状況をいとも簡単にくらべて しまっていますが、
30年代の歴史から教訓としてなにを学べるのか
それを簡潔に答えるのは実のところ難しいのです。



みなさんは、
30年代の教訓とはなにかと聞かれてすぐに答えられますか。
ここでは、二つの点から答えておきましょう。
一つには、
帝国議会衆議院議員選挙や県会議員選挙の結果などから見るとわかるのですが、
一九三七年の日中戦争の頃まで、
当時の国民は、
あくまで政党政治を通じた国内の社会民主主義的な改革を求めていたということです。
(たとえば、労働者の団結権や団体交渉権を 認める法律制定など、戦後、GHQによる諸改革で実現された項目を想起してください) 
二つには、
民意が正当に反映されることによって政権交代が可能となるような新しい政治システムの創出を当時の国民もま た強く待望していたということです。


しかし戦前の政治システムの下で、国民の生活を豊かにするはずの社会民主主義的な改革への要求が、
既成政党、貴族院、枢密院など多くの壁に阻まれて実現できなかったことは、
みなさんもよくご存知のはずです。
その結果いかなる事態が起こったのか。


社会民主主義的な改革要求は既存の政治システム下では無理だということで、
擬似的な改革推進者としての軍部への国 民の人気が高まっていったのです。
そんな馬鹿なという顔をしていますね。
しかし陸軍の改革案のなかには、
自作農創設、 工場法の制定、農村金融機関の改善など、
項目それ自体はとてもよい社会民主主義的な改革項目が盛られていました。


ここで私が「擬似的な」改革と呼んだ理由は想像できますね。
擬似的とは本物とは違うということです。
つまり陸軍であ れ海軍であれ、
軍という組織は
国家としての安全保障を第一に考える組織ですから、
ソ連との戦争が避けられない、
あるい は
アメリカとの戦争が必要となれば、
国民生活の安定のための改革要求などは最初に放棄される運命にありました。


ここまでで述べたかったことは、
国民の正当な要求を実現しうるシステムが機能不全に陥ると、
国民に、
本来見てはならない夢を擬似的に見せることで
国民の支持を獲得しようとする政治勢力が現れないとも限らないとの危惧であり教訓です。

戦前期の陸軍のような政治勢力が再び現れるかもしれないなどというつもりは全くありません。「レイテ戦記」 「俘虜 記」の作者・大岡昇平も『戦争』(岩波現代文庫)のなかで、歴史は単純には繰り返さない、「この道はいつか来た道」 と考えること自体、敗北主義なのだと大胆なことを述べています。



ならば現代における政治システムの機能不全とはいかなる事態をいうのでしょうか。一つに、現在の選挙制度からくる桎梏が挙げられます。衆議院議員選挙においては比例代表制も併用してはいますが、議席の六割以上は小選挙区から選ばれ ます。一選挙区ごとに一人の当選者を選ぶ小選挙区制下では、与党は、国民に人気がないときには解散総選挙を行ないません。これは2008年から2009年にまさに起こったことでしたが、本来ならば国民の支持を失ったときにこそ選挙がなされ なければならないはずです。しかしそれはなされない。

政治システムの機能不全の二つ目は、小選挙区制下においては、投票に熱意を持ち、かつ人口的な集団として多数を占め る世代の意見が突出して尊重されうるとの点にあります。2005年の統計では、総人口に占める六五歳以上の高齢者の割合は二割に達しました。そもそも人口の二割を占める高齢者、さらに高齢者の方々は真面目ですから投票率も高く、たとえ ば郵政民営化を一点突破のテーマとして自民党が大勝した05年の選挙では、60歳以上の投票率は八割を超えました。そ れに対して20歳台の投票率は四割台と低迷しました。そうであれば、小選挙区制下にあっては、確実な票をはじきだしてくれる高齢者世代の世論や意見を為政者は絶対に無視できない構造が出来上がります。地主の支持層が多かった戦前の政 友会などが、自作農創設や小作法の制定などを実現できなかった構造とよく似ています。

私自身あと十七年もすれば立派な高齢者ですから、これまで述べたことは天に唾する行為に他なりませんが、義務教育 期間のすべての子供に対する健康保険への援助や母子家庭への生活保護加算は、なによりも優先されるべき大切な制度で す。しかしこちらには予算がまわらない。その背景には子育て世代や若者の声が政治に反映されにくい構造があるからで す。

そのように考えますと、これからの日本の政治は若年層贔屓と批判されるくらいでちょうどよいと腹をくくり、若い 人々に光をあててゆく覚悟がなければ公正には機能しないのではないかと思われるのです。教育においてもしかり。若い 人々を最優先として、早期に最良の教育メニューを多数準備することが肝心だと思います。また若い人々には、自らが国民 の希望の星だとの自覚を持ち、理系も文系も区別なく、必死になって歴史、とくに近現代史を勉強してもらいたいもので す。三○年代の歴史の教訓という話からここまできました。

さてこの本は、朝日出版社の鈴木久仁子さんが長年準備してきた企画に基づき、神奈川県の私立・栄光学園の石川昌紀先 生、相原義信先生、福本淳先生をはじめ、「おわりに」でお名前を挙げた諸先生のご尽力により、ようやく出来上がったも のです。東京都の私立・桜蔭(おういん)学園で中高生活を送った私にとって、栄光学園は初めて足を踏み入れた男子校でありまし た。

この本は、2007年の年末から翌年のお正月にかけて五日間にわたって行なった講義をもとに、序章から5章までで構 成されています。序章では、対象を見る際に歴史家はどのように頭を働かせるものなのか、さらに世界的に著名な歴史家た ちが「出来事」とは別に立てた「問い」の凄さを味わいながら、歴史がどれだけ面白く見えてくるものなのかをお話ししま した。
1章で日清戦争、
2章で日露戦争、
3章で第一次世界大戦、
4章で満州事変と日中戦争、
5章で太平洋戦争を扱って います。
歴史好きであればどの章から読んでも面白いはずです。ただ、歴史は暗記ものじゃないか、歴史など本当の学問に はとても見えないなどと少しでも思われたことのある方でしたら、ぜひとも序章から読んでみてほしいと思います。


以前『戦争の日本近現代史』(講談社現代新書) という本を書いたとき、日清戦争から太平洋戦争まで十年ごとに大き な戦争をやってきたような国家である日本にとって、戦争を国民に説得するための正当化の論理にはいかなるものがあったのか、それをひとまず正確に取りだしてみようとの目論見(もくろみ )がありました。もし自分がその当時生きていたら、そのような 説得の論理に騙されただろうか、どうも騙されてしまいそうだ、との疑念があったからです。 


今回の講義では、扱った対象こそ同じですがいま少し視野を広くとり、たとえば
序章では、
①9・11テロ後のアメリカ と日中戦争期の日本に共通する対外認識とはなにか、
②膨大な戦死傷者を出した戦争の後に国家が新たな社会契約を必要と
③戦争は敵対する国家の憲法や社会を成立させている基本原理に対する攻撃というかたちをとるとルソー は述べたが、それでは太平洋戦争の結果書きかえられた日本の基本原理とはなんだったのか、などの論点を考えてみました。戦争というものの根源的な特徴を抽出してみたかったのです。

つまるところ時々の戦争は、国際関係、地域秩序、当該国家や社会に対していかなる影響を及ぼしたのか、また時々の戦 争の前と後でいかなる変化が起きたのか、本書のテーマはここにあります。自国民、他国民をともに絶望の淵に追いやる戦争の惨禍が繰り返されながらも、戦争はきまじめともいうべき相貌をたたえて起こり続けました。栄光学園の生徒さんには、自分が作戦計画の立案者であったなら、自分が満州移民として送り出される立場であったならなどと授業のなかで考え てもらいました。講義の間だけ戦争を生きてもらいました。そうするためには、時々の戦争の根源的な特徴、 地域秩序や国家や社会に与えた影響や変化を簡潔に明解にまとめる必要が生じます。その成果がこの本です。


加えて、日本を中心とした天動説ではなく、中国の視点、列強の視点も加え、最新の研究成果もたくさん盛り込みまし た。日本と中国がお互いに東アジアのリーダーシップを競りあった結果としての日清戦争像や、陸海軍が見事な共同作戦(りょじゅん旅順攻略作戦)を行なった点にこそ新しい戦争のかたちとしての意義があったとロシア側が認めた日露戦争像など、見て きたように語っておりますので中高生のみならず中高年の期待も裏切らないはずです。

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