酒に対す <白 居易>
酒に對す(白楽天) カタツムリの左右の角(つの)の上のちっぽけな国(些細な事)で何を争うと言うのか。 我々は、火打ち石で生じる火の一瞬の光の中に生きているようなものなのだ。 富んでいる人も、貧しい人も、各々それ相応に、このはかない人生を楽しめば良いではないか。 口を開いて、大いに笑おう。そうしない者は愚か者と言うべきであろう。 読み方 酒に対す <白 居易> 蝸牛角上 何事を争う 石火光中 此の身を寄す 富に随い貧に随うて 且く歓楽す 口を開いて笑わざるは 是痴人 さけにたいす <はく きょい> かぎゅうかくじょう なにごとをあらそう せっかこうちゅう このみをよす とみにしたがいひんにしたごオて しばらくかんらくす くちをひらいてわらわざるは これちじん 詩の意味 かたつむりの角の上のような小さな世界で人々は何を争っているのか。あたかも火打石の火花のような一瞬のはかないこの世の中に、仮にこの身を置いているというのに。 金持ちであろうと貧しかろうと、それなりに楽しく暮らそう。口をあけて気持ちよく笑わないのは、愚かな人である。 語句の意味 蝸牛角上争 かたつむりの角の上での争い とるに足らない争い 石 火 火打石を打つ時に出る火花 ほんの短い時間 人生のはかないたとえ 且 ほんのわずかな間 痴 人 愚か者 鑑賞 笑う門には福来たる 58歳のころの作品である。当時、洛陽に隠棲(いんせい)していた。起句は「荘子(そうじ)」の「蝸(かたつむり)の左角に国する者あり、触氏(しょくし)という。蝸の右角に国する者あり、蛮氏(ばんし)という。時に相ともに地を争って戦い、死するもの数万人……」に基づく。また結句も「荘子」の「人上寿は百歳、中寿は八十、下寿は六十、病痩(びょうそう)・死喪(しそう)・憂患(ゆうかん)を除きて、その中に口を開きて笑うもの一月の中、四五日に過ぎざるのみ」とあるの借用か。 白居易の人生指針は「知足安分」、つまり足るを知り、分に安んじることである。であるのに世間では無意味な争いが続き人々は悲しんでいる。富める人も貧しいものも楽しい人生でなくてはならない。はかない人生の中で笑う日の1日でも多いことが人生の幸せであると歌うのである。それにしても、はかない人生を「石火」と言い切ったのは究極すぎて面白い。日...