峨眉山月<李白>




峨眉山月<李白>
峨眉山月 半輪の秋
影は平羌江の 水に入りて流る
夜 清渓を発して 三峡に向こう
君を思えども見えず 渝州に下る

がびさんげつ<りはく>
がびさんげつ はんりんのあき
かげはへいきょうこうの みずにいりてながる
よる せいけいをはっして さんきょうにむこう(オ)
きみをおもえどもみえず ゆしゅうにくだる

通釈:
峨眉山にかかる半輪の秋月。
その影は平羌江の水に映って、舟と共に流れている。
夜、清渓を出発して、三峡の方へ向かおうとする私の舟。
もう一度君を見たく思いながら、ついに見えなくなったままに、渝州をさして下ってゆく。

現代語訳(口語訳)

峨 眉 山 月 半 輪 秋
峨眉山に半月がかかる秋に

影 入 平 羌 江 水 流
月の光は平羌江に映え、流れていく

夜 發 清 渓 向 三 峡
私は夜のうちに清溪を出発して三峽へと向かう

思君 不 見 下 渝 州
その道中に君を(見たいと)思っていたが君は見えず、(私は)渝州へと(川を)下っていく


詩の意味

 峨眉山の上に半輪の秋の月がかかっている。その月影は平羌江の水に映って舟とともに流れている。
 私はこの夜、清渓を舟出して三峡に向かいながらもう一度君を見たいと思ったが、ついに見ることができないままに渝州を指して下って行ったのである。

鑑賞
李白は何を思いながら長江を下ったのでしょう

 李白は剣術を学び任侠の徒と交わったり、隠者のように暮らす青年時代であったりしたが、25歳のころ故郷を後にしています。生涯帰らないと覚悟し、大志を抱いて国を出たのです。この詩はそういう「故郷と決別する詩」なのです。「君」とは月の大好きだった李白を考えると、故郷の月なのでしょうが、恋人や友人とも考えられます。

語句の意味
峨眉山
作者の故郷 四川省成都の南にある名山 二つの峰が向かい合って蛾の眉に似ているので名づけられたという
半 輪
半円の月 影 ここでは月の光
平羌江
峨眉山のふもとを流れて岷江(みんこう=長江の上流)に合流する川
清 渓
岷江に臨んだ蜀(四川省)の地名
三 峡
巫山(ふざん)の三峡とは別でこれは渝州にあるもの 明月峡と温湯(おんとう)峡と石洞(せきどう)峡をいう
渝 州
今の四川省重慶市
備考
三峡の読み方

 「峡」は「こう」と読むのが漢音の読み方として正統的であり、当会は「こう」としてきたが、近年「こう」では意味が通じず、「きょう」と読むのが一般的であるため改めることにした。

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