◆◎春夜聞笛(李白)

読み方
春夜笛を聞く<李白>
誰が家の玉笛か 暗に声を飛ばす
散じて春風に入りて 洛城に満つ
此の夜曲中 折柳を聞く
何人か 故園の情を 起こさざらん
しゆんやふえをきく<りはく>
たがいえのぎょくてきか あんにこえをとばす
さんじてしゅんぷうにいりて らくじょうにみつ
このよきょくちゅう せつりゅうをきく
なんびとか こえんのじょうをおこさざらん



現代語訳

誰が家の玉笛ぞ 暗に声を飛ばす
誰の家で吹く笛の音だろうか。どこからともなく笛の音色が飛ぶように聞こえてくる。

散じて春風に入りて 洛城に満つ
(その音は)春の風にのって、洛陽の町いっぱいに広がっている。

此の夜 曲中 折柳を聞く
この夜、耳にした曲の中に「折楊柳」があった。

何人か故園の情を起こさざらん
(この曲を耳にして)いったい誰が故郷を懐かしむ気持ちを起こさずにいられようか。(いや、故郷を懐かしむ気持ちを起こすだろう。)


詩の意味

 誰の家で吹く音色(ねいろ)のよい笛の音(ね)であろうか、どこからともなくその音が聞こえてくる。それは折からの春風に乗って、洛陽の町いっぱいに満ちわたるようである。
 こんな夜、曲の中に折楊柳の曲があったが、この曲を聞けば、誰が故郷を恋い慕う思いを起こさずにはいられようか。

柳は生命力の強い植物ですから、健康でいてくださいという意味もあったでしょう。
 柳の枝を折って贈る習慣から、のちに笛の曲の「折楊柳」が作られ送別の時に演奏されました。
柳には別れのイメージがあるため「客舎青々柳色新たなり」(王維、第24回)などのように別れの詩によく詠われます。
 中国では柳を贈ることが「餞」=「はなむけ」だったのですが、日本語の「はなむけ」という言葉は、旅人の行く方向へ馬の 鼻面はなづらを向ける「馬の 鼻向はなむけ」からきています。
『土佐日記』の冒頭部分に次のようにあります。

 二十二日に、和泉いづみの国までと、平らかにぐわん立つ。
藤原のときざね、船路なれど馬のはなむけす。
上中下酔かみなかしもゑ ひあきて、いとあやしく、潮海しほうみのほとりにてあざれあへり。

 さて、李白の詩の結句は「何人不起~(何人か~起こさざらん)」とあります。
「いったい誰が起こさないものがあろうか、いや、みな起こす」という反語表現です。
「みな」の意は承句の「満」と応じます。
「故園の情」の「故園」は故郷の家の園庭です。
その故園への熱い思慕の情が「故園の情」です。
 春の夜に湧きおこる望郷の思いを、笛の美しい音色とともにしっとりと詠った名作です。


語句の意味

  • 玉 笛
    笛を美しく形容したことば 音色のよい笛 「玉」は美称
  • どこからともなく
  • 洛 城
    洛陽の町
  • 折 柳
    別れの際に歌われる折楊柳の曲
  • 故園情
    故郷を思う情



沒有留言:

張貼留言

注意:只有此網誌的成員可以留言。

【來論】錢言:特朗普“以商促和” 的俄烏計劃讓歐美關係幾近破裂

【來論】錢言:特朗普“以商促和” 的俄烏計劃讓歐美關係幾近破裂 不是真的。这条推文是一个讽刺性的 meme(网络梗),基于最近特朗普与普京在阿拉斯加会晤的新闻,以及俄乌和平谈判的背景,但冯德莱恩(Ursula von der Leyen)从来没有说过这样的话。欧盟官方和主流媒体(...