力ハ抜レキ山ヲ兮気ハ蓋レフ世ヲ
力は山を抜き気は世を蓋ふ
我が力は山をも引き抜き、我が気はこの世をも覆う。
時不レ利アラ兮騅不レ逝カ
時利あらず騅逝かず
※兮=置き字(語調を整える役割・強調・感嘆)
時の運は我に利なく(自分に味方せず)、駿馬である騅も疲れ果てて走れない
騅ノ不レル逝カ兮可二キ奈-何一ス
騅の逝かざる奈何すべき
※奈何・若何・如何(いかん)=疑問、「どうしたらよいか」
騅が走らないのを、どうしたらよいのか
虞ヤ兮虞ヤ兮奈レ若ヲ何セント
虞や虞や若を奈何せんと。
虞よ虞よ、汝をどうしたらよいのか、と
歌フコト数闋、美人和レス之ニ。項王泣数行下ル。
歌ふこと数闋、美人之に和す。項王泣数行下る。
(項王は)数回繰り返して歌い、虞もともに(調和して)歌った。項王ははらはらと涙を流した。
左右皆泣キ、莫二シ能ク仰ギ視一ルモノ。
左右皆泣き、能く仰ぎ視るもの莫し。
※能ク= ~できる
左右の者たちも皆泣き、誰も仰ぎ見ること(顔を上げること)ができなかった。
| 白文 | 書き下し文 | 訳文 |
|---|---|---|
| 力抜山兮気蓋世 | 我が力は山をも引き抜き、気は世をも蓋うというのに、 | |
| 時不利兮騅不逝 | 時勢は不利で、騅も進もうとしない。 | |
| 騅不逝兮可奈何 | 騅の逝かざるを | 騅が進まぬことを、我はどうすることもできない。 |
| 虞兮虞兮奈若何 | 虞や、虞や、我はそなたをどうすればよいのだろうか。 |
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