父を売る子
悪法?
当時、GHQ と日本政府が最大限に食糧を流通させようとしていた時に、それを堰き止めて値を釣り上げる転売ヤーを取り締まる食糧管理法を、悪法と呼ぶ理由がありません。悪かったのは遅配が多発したことであり、転売ヤーも遅配の一因になっていました。
しかし、実際に逮捕されていたのは転売ヤーではなく、わずかな財産をわずかな食糧に変えていた一般庶民でした。それを裁く立場になった山口良忠は、せめてその在職中は、転売ヤーから買うことはしないと誓った。
当たり前でしょう。転売ヤーを裁く立場の人が、転売ヤーから買ってたらそりゃ汚職です。一般庶民の信頼を損ねます。「生き残った者が勝ち」という価値観が染み付いた現代日本では、こんなことも分からない人が増えたので、グダグダ政治になってるんじゃないですか。
そして、山口がそうしたのはその職にあった間です。判事を辞した後は、ふつうに配給以外のものも口にしていました。しかし、その一年足らずの職務で、彼の体はすっかり参ってしまっていた。
そしてざっと見、今でも同じことを言う回答があるんだなと思いました。
たかが闇の取り締まりくらいで死んでどうするという。そして良忠の家族を最も傷つけたのは片山哲首相の菊江夫人の言葉だった。
「家庭を守る女性の立場としては、多少のゆとりを持つて夫や子供の生命を守るべきだと考えます。畑の仕事を女の手で出来るだけやることなどでも大きな効果があります。奥さんにもう少し何かの工夫がなかつたものでしようか」(朝日新聞、1947年11月6日付)
まるで妻の矩子の気遣いが足りないから夫が餓死したと言わんばかりだ。妹の萩子によると、これを読んだ矩子はショックを受けノイローゼになってしまったという。
(「プリンシプルの男」か「狂人」か 遺族が明かす餓死判事の死の真相 - AERAdot)
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知人にリストラ担当になったのがいますが、彼はすべての整理人員のクビを切った後、最後に自分のクビを切りました。そこまでやるかとも思いますが、彼なりのケジメだったのでしょう。
そういうのに反発する人がいるのも理解します。山口の長男は「美談の子」にされたことで(と本人の談)、身を持ち崩し、2011 年に己の人生の総決算として『父を売る子』という本を出版しました。
だから子供に悪影響が…!などと早合点してはいけない。次男はまっとうに育ったそうなので。

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