トランプ当選、台湾の「悪夢」となる危険な兆候
対中抑止構造に影響し、中国有利に流れる恐れ
小笠原 欣幸 : 台湾・清華大学教授、東京外国語大学名誉教授
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政治/經濟 >台灣局勢緊張
川普當選對台灣來說是「惡夢」的危險訊號
人們擔心這會影響對中國的威懾結構,使局勢轉向有利於中國的方向。
2024/11/07 15:00
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小笠原義行:台灣清華大學教授、東京外國語大學榮譽教授
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川普宣布勝利。世界領導人在致以祝賀的同時,也在為即將到來的川普時代做準備(照片:江海雲/紐約時報)
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共和黨候選人川普贏得2024年美國總統大選。人們也擔心,如果奉行美國優先的川普重新擔任總統,國際局勢將會發生什麼變化,以及這將如何影響日本最擔心的台灣局勢。
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川普繼續發表對台灣不友善言論
我從八月開始就住在台灣,一直在看台灣電視報道,台灣媒體對美國總統大選的興趣非常高。即使日本在10月底解體並舉行大選,對美國大選的報道也遠遠多於對日本大選的報道。
台灣媒體的政治立場截然不同,很難一概而論「台灣媒體」是一樣的。儘管如此,人們普遍對川普抱持戒心。因為川普在競選期間多次發表對台灣不利的言論。
川普在接受彭博社等美國媒體採訪時表示,“台灣竊取了我們的半導體業務。”關於台灣的安全,他抱怨台灣依賴美國,但“不為其保護付費”,並表示如果當選總統,他將敦促台灣大幅增加國防開支。這兩種說法多次被台灣媒體報道。
此外,前助理的證詞顯示,川普對台灣發表了極為貶低的言論,稱其「只不過是筆尖而已」。與拜登總統盛讚「民主台灣」不同,川普從未對台灣發表任何正面評價。
台灣賴清德政府一直謹慎地表示正在「關注」美國總統大選,並避免提及候選人。台灣政府的官方立場是加強美台關係,無論是共和黨或民主黨。事實上,前總統蔡英文八年的前半段是川普政府。
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自2018年以來,川普政府將中國視為競爭對手,並明確地聚焦在台灣。 2019年宣布F-16戰鬥機等大額軍售,蔡英文政府成功深化與川普政府的合作。這對沒有正式外交關係的台灣來說是一項重要成就,不少台灣民眾表示希望川普在2020年美國總統大選中連任。
在此背景下,台灣似乎無需對川普當選保持警覺。一些台灣評論人士表達了對川普對華強硬立場的期待,而川普對台灣的不友善言論是在競選期間發表的,是否會反映在政策上?
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川普先生對台灣的形象太強烈了。
但對台灣來說,越看細節就越要警覺。這有兩個原因。一是川普對台灣的貶低言論可以被視為他的真實意圖,而不僅僅是一個笑話或選舉說辭。其次,許多在川普第一屆政府期間推行對台政策的高級政府官員已經離開了川普的邊緣。有人擔心,對台灣根深蒂固的漠視將轉化為政策。
川普先生不只一次,而且多次發表貶低台灣的言論。 「台灣從美國竊取半導體業務」的說法完全是誤解。日本專家闡述了台灣半導體產業的發展歷程,以及對美國IT產業發展的巨大貢獻。
如果您閱讀這些解釋,您會發現台灣成功地推出了一種獨特的商業模式,專門從事稱為代工(合約製造)的過程。然而,川普先生本人認為它是被盜的,即使有人解釋它也可能不會改變他的想法。高層執迷於這樣的信念,對台灣一點好處都沒有。這可能會導致將半導體製造從台灣轉移到美國的壓力。
台灣增加國防開支的論點與共和黨專家的論點一致,而且有更深的根源。曾在川普第一屆政府期間擔任副助理國防部長的埃爾布里奇·科爾比認為,台灣應該將國防開支從目前佔GDP的2.5%增加到10%,或至少5%。換言之,川普的言論並不是突然的言論,而是那些正在考慮「美國優先」外交政策的人的論點。
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台灣確實需要增加國防開支,進一步加強國防力道。但川普及其周邊人士的言論,卻缺乏對台灣民意的了解。
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這可能會加劇台灣對美國的懷疑。
川普先生的說法聽起來像是在告訴台灣購買大量美國武器,然後照顧好自己的防禦,這可以理解為美軍試圖不要像在烏克蘭那樣支持台灣。台灣終將被美國拋棄的「可疑論」有可能在台灣流傳,而這也正是旨在統一(合併)台灣的中共所要發展的目標。
川普的競選團隊完全沒有意識到台灣輿論的這種趨勢。既然他們看不起自己,他們可能認為自己不需要擔心台灣的輿論。然而,如果美國明顯不能依賴,台灣輿論可能會開始偏離傳統的親美立場。
這可能會影響美國在與中國的競爭中遏制中國的戰略,也可能對對華採取強硬立場的川普本人造成打擊。這也可能對日本有關台灣緊急狀態的討論產生影響。結果是,這可能會引起東亞對華威懾結構以及中美權力關係的連鎖反應。不可否認,台灣是美國和中國之間的一個搖搖欲墜的實體,但川普等人可能沒有意識到,它也是一個對美國和中國施加影響的演員。
在川普第一屆政府中,國務卿、國防部長、國家安全顧問以及隨後的職位一般都是由深知台灣微妙地位和戰略重要性的人擔任。他們來自關心美國國家利益的精英階層。
有人指出,當時的這些政府高級官員利用川普總統不關注政策細節的機會,推進了一系列針對台灣的政策(布魯金斯學會報告,2024年10月)。然而,他們要么與川普發生衝突,要么厭倦了他而離開了他。從台灣的角度來看,川普第一屆政府中那些有美好回憶的成員已經不存在了。
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有觀點認為,川普第二屆政府將在外交和安全政策上更強烈地體現川普的意圖。換句話說,川普先生的信心可能會增強,並派出唯唯諾諾的人前往他在第一屆政府期間必須依賴專家的領域。
由於美國輿論整體偏向對華警惕,因此有可能任命對華強硬派人士。這種期待在台灣當然存在,但這也需要謹慎。對大陸採取強硬態度,只停留在口頭上,對台灣沒有好處。重要的是中國是否有意願大幅加強台灣的安全。這需要時間來確定。
根據政府的人事變動,上述擔憂可能會被消除。但必須認識到,美國歷屆政府在台灣問題上的角色與「美國優先」的外交政策理念不符。如果美國在國際社會的影響力長期下降,對中國有利,對台灣不利。
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這會是一場惡夢嗎?我希望這種悲觀情緒是沒有根據的。
正如我們到目前為止所討論的,川普當選對台灣局勢可能產生的影響接近一場「惡夢」。競選的最後階段,隨著川普明顯佔上風,有關台灣地區美中衝突格局肯定會持續下去的說法紛紛出爐,以消除擔憂。
例如台灣對美國的重要性依然不變,所以無論哪位候選人獲勝,對台灣都不會產生負面影響。美貿易戰愈演愈烈,台灣有機會,預計大軍售,未來四年要加強台灣國防裝備,美國退出對烏克蘭的支持,專注於對華戰略有一些樂觀的觀點,比如這對台灣來說是一件積極的事情。
另一方面,也有人質疑哈里斯是否會為台灣帶來任何好處。筆者認為,這種樂觀情緒包含著避免川普衝擊的風險管理心理。
確實,川普很難預測。我希望四年後我們能夠認識到悲觀主義是錯的。即使日本持續加強防衛,也必須牢記台灣的安全環境未來可能會改變。我希望我的論點被證明是沒有根據的。
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小笠原由之
台灣清華大學教授、東京外國語大學榮譽教授
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勝利宣言したトランプ氏。世界各国の首脳は祝意を送りながらも、来るトランプ時代に備え始めている(写真:Haiyun Jiang/The New York Times)
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2024年アメリカ大統領選挙は共和党のトランプ候補が当選した。アメリカ第一を掲げるトランプ氏の大統領返り咲きは国際情勢にどうなるのか、日本にとって最大の関心事の一つである台湾情勢への影響も懸念される。
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台湾に非友好的な発言が続くトランプ氏
筆者は8月から台湾に在住し台湾のテレビ報道を見てきたが、台湾メディアのアメリカ大統領選への関心は非常に高かった。10月末に日本の解散・総選挙があった時も、日本の選挙のニュースよりもアメリカ選挙の報道量のほうが圧倒的に多かった。
台湾のメディアはそれぞれ政治的立場が明確かつ大きく異なるので、一概に「台湾メディアは」とはいえない。それでもトランプ氏への警戒感は共通していた。それは、この選挙期間中にトランプ氏が台湾について好意的でない発言を繰り返したからだ。
トランプ氏はブルームバーグなどのアメリカメディアのインタビューで「半導体ビジネスが台湾に盗まれた」と述べてきた。また台湾の安全保障について、台湾はアメリカに依存しているのに「保護費を払っていない」と不満を述べ、大統領に当選した場合に台湾に防衛費の大幅増を迫る姿勢を示した。この2つの発言は台湾メディアが繰り返し伝えている。
ほかにもトランプ氏が台湾を「ペンの先っぽ程度」と極度に軽視する発言をしたことが、かつての補佐官の証言で明らかになっている。バイデン大統領が「民主主義の台湾」を高く評価する発言をしてきたのとは対照的にトランプ氏は台湾に好意的な発言をしたことがない。
台湾の頼清徳政権はアメリカ大統領選について「注視している」という慎重な言い方に徹し、候補者への言及を避けてきた。台湾政府は、共和党か民主党を問わず米台関係を強化していくというのが公式の立場だ。実際、蔡英文前総統の8年間の前半はトランプ政権だった。
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2018年以降トランプ政権は中国をライバル視し、台湾重視の姿勢を鮮明にした。2019年にはF16戦闘機などの大型の武器売却も発表され、蔡政権はトランプ政権との連携を深めることに成功した。これは正式な外交関係がない台湾にとって重要な成果で、2020年のアメリカ大統領選挙ではトランプ氏の再選に期待する声が台湾で多く聞かれた。
この経緯を考えれば台湾がトランプ氏の当選を警戒する必要はないように見える。台湾の評論家の中からもトランプ氏の対中強硬姿勢に期待する声が出ており、トランプ氏による台湾への非友好的発言は選挙戦の中で出たものだから政策に反映されるのかは別だという指摘もある。
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思い込みが強すぎるトランプ氏の台湾イメージ
しかし、台湾にとっては細かく見れば見るほど警戒感が高まらざるをえない。その理由は2点ある。1つは台湾軽視発言が決してジョークや選挙レトリックではなくトランプ氏の本心だと考えられること。2つ目は、第1次トランプ政権で台湾重視の政策を進めた政権幹部の多くがトランプ氏の周辺から去ってしまったことだ。根深い台湾軽視が政策に落とし込まれる懸念がある。
トランプ氏の台湾軽視発言は1度だけでなく何度も繰り返されている。「台湾がアメリカから半導体ビジネスを盗んだ」というのはまったくの誤解である。台湾の半導体産業がいかに発展してきたのか、そしてそれがアメリカのIT産業の発展に大きく寄与してきたことは日本の専門家が解説してきた。
それらの解説を読めば、台湾がファウンドリー(受託製造)と呼ばれる工程に特化する独自のビジネスモデルを立ち上げることで成功したことがわかる。だが、トランプ氏本人が「盗まれた」と思い込んでおり、おそらく誰かが解説したところで考えは変わらないであろう。トップがこういう思い込みにとらわれていることは台湾にとってまったくプラスにならない。半導体製造を台湾からアメリカに移せという圧力につながる可能性もある。
台湾の防衛費を増やせという主張については、共和党系の専門家らの主張と一致していてさらに根が深い。第1次トランプ政権で国防次官補代理を務めたエルブリッジ・コルビー氏は、台湾は現在対GDP比2.5%である防衛支出を10%に引き上げるべきで最低でも5%にと主張をしている。つまり、トランプ氏の発言は唐突なものではなく「アメリカ・ファースト」の外交政策を考えている人たちの間で出ている主張なのだ。
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台湾は防衛費を増やして防衛努力をさらに高める必要があるのは確かだ。しかし、トランプ氏やその周辺から出てくる言葉は台湾の民意への理解を欠いている。
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台湾で広がる疑米論を助長しかねない
トランプ氏らの主張は、台湾にアメリカの武器を大量に買わせたあげく防衛は自分たちでやれと言っているように聞こえ、ウクライナ戦争のようにアメリカ軍は台湾を支援しない考えなのかと受け取られる可能性がある。アメリカには結局見捨てられるという「疑米論」が台湾で広がる可能性があり、それはまさに台湾統一(併合)を目指す中国共産党が狙っている展開だ。
トランプ氏の陣営はそのような台湾世論の動向をまったく認識していない。上から目線なので台湾の世論など気にする必要もないと思っているのだろう。しかし、アメリカが頼りにならないことがはっきりすれば、台湾の世論は従来の親米から動き始めるだろう。
それは中国との競争で対中抑止を図るアメリカの戦略にも影響しかねず、対中強硬姿勢であるトランプ氏自身にも打撃になりかねない。日本での台湾有事の議論にも影響しかねない。結果、東アジアにおける対中抑止構造や米中の力関係に連鎖反応を引き起こす可能性がある。台湾は米中の間で揺さぶられる存在であることは否定できないが、米中に影響を与えるアクターでもあることをトランプ氏らはわかっていないのではないか。
第1次トランプ政権では、国務長官、国防長官、安全保障担当大統領補佐官とそれに次ぐポストを基本的に台湾の微妙な位置づけと戦略的重要性をよくわかっている人たちが担っていた。彼らはアメリカの国家利益を考えるエリート層の出身である。
これらの当時の政権高官らは、トランプ大統領が政策の細部にこだわらない性質をうまく使って台湾重視の政策を次々と進めていったと指摘されている(ブルッキングス研究所のレポート、2024年10月)。しかし、いずれもトランプ氏と対立するか嫌気がさすかしてトランプ氏から離れてしまった。台湾から見てよき記憶がある第1次トランプ政権の面々はもういないのである。
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第2次トランプ政権は外交・安全保障の政策でもトランプ氏の意向がより強く反映されるという見方が出ている。つまり、第1次政権の時は専門家に頼らなければならなかった分野でもトランプ氏が自信を深め、イエスマンを送り込む可能性がある。
アメリカの世論が全体的に対中警戒論に傾いているので対中強硬派の人物が配置される可能性もある。そういう期待は台湾に確かにあるが、これも要注意だ。口先だけの対中強硬論は台湾にとってプラスにならない。台湾の安全保障を実質的に強化する意思を持っているかどうかが重要だ。その見極めには時間がかかる。
政権人事によっては、上述の懸念が中和される可能性もある。それでも台湾に関与してきた歴代のアメリカ政府の役割は、「アメリカ・ファースト」の外交政策の考え方と矛盾することは認識しておく必要がある。アメリカの国際社会における影響力が長期的に低下していくことになれば、中国のプラスになり台湾にとってはマイナスとなる。
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悪夢になるか?悲観論が杞憂に終われば幸い
ここまで論じてきたようにトランプ氏当選で考えられる台湾情勢への影響は「悪夢」に近い。選挙戦終盤にトランプ氏の優勢が明らかになるにつれて、台湾では米中対立の構造が続くことが確実だとして懸念を打ち消す議論もかなり出てきた。
例えば、アメリカにとって台湾の重要性は変わらないのでどちらの候補が勝っても台湾にマイナスにはならない、トランプ氏の不確実性は中国にとっても同じでむしろ中国のほうこそ困惑する、トランプ氏になれば米中貿易戦争が激化し台湾にとってチャンス、大型の武器売却が見込まれるのでこの4年間に台湾の防衛装備を強化しておきたい、アメリカがウクライナ支援から手を引いて対中戦略に集中するのは台湾にプラス、など楽観的な見方もある。
逆にハリス氏だと台湾にプラスなのかという疑問も出ていた。筆者はこれらの楽観論の中にはトランプ・ショックを回避するためのリスク管理の心理も含まれていると見ている。
トランプ氏が予測困難なのは事実だ。筆者としては4年後に「悲観論は誤りであった」となることを望みたい。防衛強化を進める日本国内でも、これから台湾の安全保障環境が変わる可能性があることを頭の片隅に置いておくことは必要だ。拙論が杞憂に終われば幸いだ。
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小笠原 欣幸
台湾・清華大学教授、東京外国語大学名誉教授
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トランプ当選、台湾の「悪夢」となる危険な兆候対中抑止構造に影響し、中国有利に流れる恐れ
小笠原 欣幸 : 台湾・清華大学教授、東京外国語大学名誉教授著者フォロー

勝利宣言したトランプ氏。世界各国の首脳は祝意を送りながらも、来るトランプ時代に備え始めている(写真:Haiyun Jiang/The New York Times)
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※本記事は2024年11月9日15:00まで無料で全文をご覧いただけます。それ以降は有料会員限定となります。
2024年アメリカ大統領選挙は共和党のトランプ候補が当選した。アメリカ第一を掲げるトランプ氏の大統領返り咲きは国際情勢にどうなるのか、日本にとって最大の関心事の一つである台湾情勢への影響も懸念される。
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台湾に非友好的な発言が続くトランプ氏
筆者は8月から台湾に在住し台湾のテレビ報道を見てきたが、台湾メディアのアメリカ大統領選への関心は非常に高かった。10月末に日本の解散・総選挙があった時も、日本の選挙のニュースよりもアメリカ選挙の報道量のほうが圧倒的に多かった。
台湾のメディアはそれぞれ政治的立場が明確かつ大きく異なるので、一概に「台湾メディアは」とはいえない。それでもトランプ氏への警戒感は共通していた。それは、この選挙期間中にトランプ氏が台湾について好意的でない発言を繰り返したからだ。
トランプ氏はブルームバーグなどのアメリカメディアのインタビューで「半導体ビジネスが台湾に盗まれた」と述べてきた。また台湾の安全保障について、台湾はアメリカに依存しているのに「保護費を払っていない」と不満を述べ、大統領に当選した場合に台湾に防衛費の大幅増を迫る姿勢を示した。この2つの発言は台湾メディアが繰り返し伝えている。
ほかにもトランプ氏が台湾を「ペンの先っぽ程度」と極度に軽視する発言をしたことが、かつての補佐官の証言で明らかになっている。バイデン大統領が「民主主義の台湾」を高く評価する発言をしてきたのとは対照的にトランプ氏は台湾に好意的な発言をしたことがない。
台湾の頼清徳政権はアメリカ大統領選について「注視している」という慎重な言い方に徹し、候補者への言及を避けてきた。台湾政府は、共和党か民主党を問わず米台関係を強化していくというのが公式の立場だ。実際、蔡英文前総統の8年間の前半はトランプ政権だった。
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2018年以降トランプ政権は中国をライバル視し、台湾重視の姿勢を鮮明にした。2019年にはF16戦闘機などの大型の武器売却も発表され、蔡政権はトランプ政権との連携を深めることに成功した。これは正式な外交関係がない台湾にとって重要な成果で、2020年のアメリカ大統領選挙ではトランプ氏の再選に期待する声が台湾で多く聞かれた。
この経緯を考えれば台湾がトランプ氏の当選を警戒する必要はないように見える。台湾の評論家の中からもトランプ氏の対中強硬姿勢に期待する声が出ており、トランプ氏による台湾への非友好的発言は選挙戦の中で出たものだから政策に反映されるのかは別だという指摘もある。
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思い込みが強すぎるトランプ氏の台湾イメージ
しかし、台湾にとっては細かく見れば見るほど警戒感が高まらざるをえない。その理由は2点ある。1つは台湾軽視発言が決してジョークや選挙レトリックではなくトランプ氏の本心だと考えられること。2つ目は、第1次トランプ政権で台湾重視の政策を進めた政権幹部の多くがトランプ氏の周辺から去ってしまったことだ。根深い台湾軽視が政策に落とし込まれる懸念がある。
トランプ氏の台湾軽視発言は1度だけでなく何度も繰り返されている。「台湾がアメリカから半導体ビジネスを盗んだ」というのはまったくの誤解である。台湾の半導体産業がいかに発展してきたのか、そしてそれがアメリカのIT産業の発展に大きく寄与してきたことは日本の専門家が解説してきた。
それらの解説を読めば、台湾がファウンドリー(受託製造)と呼ばれる工程に特化する独自のビジネスモデルを立ち上げることで成功したことがわかる。だが、トランプ氏本人が「盗まれた」と思い込んでおり、おそらく誰かが解説したところで考えは変わらないであろう。トップがこういう思い込みにとらわれていることは台湾にとってまったくプラスにならない。半導体製造を台湾からアメリカに移せという圧力につながる可能性もある。
台湾の防衛費を増やせという主張については、共和党系の専門家らの主張と一致していてさらに根が深い。第1次トランプ政権で国防次官補代理を務めたエルブリッジ・コルビー氏は、台湾は現在対GDP比2.5%である防衛支出を10%に引き上げるべきで最低でも5%にと主張をしている。つまり、トランプ氏の発言は唐突なものではなく「アメリカ・ファースト」の外交政策を考えている人たちの間で出ている主張なのだ。
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台湾は防衛費を増やして防衛努力をさらに高める必要があるのは確かだ。しかし、トランプ氏やその周辺から出てくる言葉は台湾の民意への理解を欠いている。
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台湾で広がる疑米論を助長しかねない
トランプ氏らの主張は、台湾にアメリカの武器を大量に買わせたあげく防衛は自分たちでやれと言っているように聞こえ、ウクライナ戦争のようにアメリカ軍は台湾を支援しない考えなのかと受け取られる可能性がある。アメリカには結局見捨てられるという「疑米論」が台湾で広がる可能性があり、それはまさに台湾統一(併合)を目指す中国共産党が狙っている展開だ。
トランプ氏の陣営はそのような台湾世論の動向をまったく認識していない。上から目線なので台湾の世論など気にする必要もないと思っているのだろう。しかし、アメリカが頼りにならないことがはっきりすれば、台湾の世論は従来の親米から動き始めるだろう。
それは中国との競争で対中抑止を図るアメリカの戦略にも影響しかねず、対中強硬姿勢であるトランプ氏自身にも打撃になりかねない。日本での台湾有事の議論にも影響しかねない。結果、東アジアにおける対中抑止構造や米中の力関係に連鎖反応を引き起こす可能性がある。台湾は米中の間で揺さぶられる存在であることは否定できないが、米中に影響を与えるアクターでもあることをトランプ氏らはわかっていないのではないか。
第1次トランプ政権では、国務長官、国防長官、安全保障担当大統領補佐官とそれに次ぐポストを基本的に台湾の微妙な位置づけと戦略的重要性をよくわかっている人たちが担っていた。彼らはアメリカの国家利益を考えるエリート層の出身である。
これらの当時の政権高官らは、トランプ大統領が政策の細部にこだわらない性質をうまく使って台湾重視の政策を次々と進めていったと指摘されている(ブルッキングス研究所のレポート、2024年10月)。しかし、いずれもトランプ氏と対立するか嫌気がさすかしてトランプ氏から離れてしまった。台湾から見てよき記憶がある第1次トランプ政権の面々はもういないのである。
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第2次トランプ政権は外交・安全保障の政策でもトランプ氏の意向がより強く反映されるという見方が出ている。つまり、第1次政権の時は専門家に頼らなければならなかった分野でもトランプ氏が自信を深め、イエスマンを送り込む可能性がある。
アメリカの世論が全体的に対中警戒論に傾いているので対中強硬派の人物が配置される可能性もある。そういう期待は台湾に確かにあるが、これも要注意だ。口先だけの対中強硬論は台湾にとってプラスにならない。台湾の安全保障を実質的に強化する意思を持っているかどうかが重要だ。その見極めには時間がかかる。
政権人事によっては、上述の懸念が中和される可能性もある。それでも台湾に関与してきた歴代のアメリカ政府の役割は、「アメリカ・ファースト」の外交政策の考え方と矛盾することは認識しておく必要がある。アメリカの国際社会における影響力が長期的に低下していくことになれば、中国のプラスになり台湾にとってはマイナスとなる。
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悪夢になるか?悲観論が杞憂に終われば幸い
ここまで論じてきたようにトランプ氏当選で考えられる台湾情勢への影響は「悪夢」に近い。選挙戦終盤にトランプ氏の優勢が明らかになるにつれて、台湾では米中対立の構造が続くことが確実だとして懸念を打ち消す議論もかなり出てきた。
例えば、アメリカにとって台湾の重要性は変わらないのでどちらの候補が勝っても台湾にマイナスにはならない、トランプ氏の不確実性は中国にとっても同じでむしろ中国のほうこそ困惑する、トランプ氏になれば米中貿易戦争が激化し台湾にとってチャンス、大型の武器売却が見込まれるのでこの4年間に台湾の防衛装備を強化しておきたい、アメリカがウクライナ支援から手を引いて対中戦略に集中するのは台湾にプラス、など楽観的な見方もある。
逆にハリス氏だと台湾にプラスなのかという疑問も出ていた。筆者はこれらの楽観論の中にはトランプ・ショックを回避するためのリスク管理の心理も含まれていると見ている。
トランプ氏が予測困難なのは事実だ。筆者としては4年後に「悲観論は誤りであった」となることを望みたい。防衛強化を進める日本国内でも、これから台湾の安全保障環境が変わる可能性があることを頭の片隅に置いておくことは必要だ。拙論が杞憂に終われば幸いだ。
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