経済学者たちの日米開戦:秋丸機関「幻の報告書」の謎を解く (新潮選書
著者は1977年生の経済思想史の研究者である。大東亜戦争の経済学的側面は「秋丸機関」によって描かれていた、と言われるが、その焼却されたと言われていた報告書が発見された。しかし、内容的には特に新規なものではなく、当時、官軍民が認識していた内容とあまり変わりなく、経済力では20:1の開きがあり、開戦2年を経過すると、彼我の差は歴然とし、敗戦へ向かう、と。
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有沢広巳ら一流経済学者を擁する陸軍の頭脳集団「秋丸機関」が、日米の経済抗戦力の巨大な格差を分析した報告書を作成していたにもかかわらず、なぜ対米開戦を防げなかったのか。「正確な情報」が「無謀な意思決定」につながっていく歴史の逆説を、焼却されたはずの秘密報告書から克明に解き明かす。瞠目の開戦秘史。
著者は1977年生の経済思想史の研究者である。大東亜戦争の経済学的側面は「秋丸機関」によって描かれていた、と言われるが、その焼却されたと言われていた報告書が発見された。しかし、内容的には特に新規なものではなく、当時、官軍民が認識していた内容とあまり変わりなく、経済力では20:1の開きがあり、開戦2年を経過すると、彼我の差は歴然とし、敗戦へ向かう、と。その典型は造船量である。しかし、独ソ戦にドイツが短期間で勝利し、バルカン、スエズ運河を抑え、一方、日本がインド洋を抑えて英国の敗戦が確定すれば、米国が講和に応じる道は開けるかも、という僅かな可能性も指摘した。このような圧倒的に不利な状況下でも、将来にファジーな要素がある場合には、「プロスペクト理論」により、人間はリスクは大きいが、僅かでも可能性のある方(開戦)を選ぶ傾向がある。こういう社会心理が、開戦選択をさせたと著者は解釈する。しかし、「戦争をせず、而も屈服せず打開の道」(開戦回避)があるとすれば、話は別である。開戦直前に、石油備蓄は2年分しかないので、開戦しなければジリ貧で負けるのと同じ、と広く認識されていた。しかし、その後の歴史は「連合国vs枢軸国」から「資本主義国vs社会主義国」へと転換した。穏忍自重の「開戦回避」の選択も「あり」、だったのかもしれない、と論を展開する。本書は客観的な数値に裏打された「正当な?」論理を紹介するだけでなく、それに対して、人間の決断は決して単純ではなく、寧ろ非論理性に傾くこともあることを指摘する。私見だが、開戦を決断したのは、日本民族の、武士道に基づく思考的特性かもしれない。つまり、皇道派の陸軍中将武藤章は語る。「敗戦は覚悟の上であり、その後の子孫の奮起を期す」と。開戦決断のプロセスは、今後の日本の歩みを考える上でも参考になるのではないだろうか。
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